約 1,898,811 件
https://w.atwiki.jp/higumix/pages/71.html
kabitter ジャンル 関連サイトなど かびかび日記(黴) 関連タグ マイリスト 【ニコニコ動画】かびかび動画(微) 最新作 代表作 コメントはこちら 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/higumix/pages/28.html
ろっく ジャンル 関連サイトなど 関連タグ マイリスト 【ニコニコ動画】作成MAD 最新作 代表作 コメントはこちら 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/higumix/pages/72.html
パート分けの固まり案2 パート分けの固まり案1 (1は没。2になりました) パート分けの固まり案2 ■01. 0 00~0 18(18秒) タイトル【無音。よって音製作は無し】 0 19~0 38(19秒) ブラック★ロックシューター 0 38~0 59(21秒) Heavenly Star ■02. 1 00~1 21(21秒) Do-Dai 1 21~1 30( 9秒)みwなwぎwっwてwきwたwww&Under My Skin 1 31~1 41(10秒)ナイト・オブ・ナイツ&ダンシング☆サムライ 1 41~1 52( 9秒) サンドキャニオン ■03. 1 53~2 02( 9秒)スカイハイ&ポップスター 2 02~2 13( 9秒)Got The Groove(死にたい!) 2 13~2 23(10秒)亡き王女の為のセプテット 2 24~2 35(11秒) Bad Apple!! feat. nomico 2 35~2 44( 9秒) 俺ら東京さ行ぐだ! ■04. 2 45~3 06(21秒)RAINBOW GIRL 3 06~3 27(19秒) Starry Sky ■05. 3 27~3 48(21秒) Hello Windows 3 49~3 59(10秒) 最強パレパレード 3 59~4 12(13秒) 空 ■06. 4 13~4 33(20秒) celluloid 4 34~4 55(21秒) 初音ミクの消失 ■07. 4 55~5 17(22秒)ライオン 5 18~5 51(33秒) 星間飛行 ■08. 5 51~6 10(19秒) ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ- 6 11~6 21(10秒) promise(ゲッダン) 6 21~6 34(13秒)魂のルフラン ■09. 6 34~6 44(10秒)ワールドイズマイン 6 45~6 55(10秒)おてんば恋娘 6 56~7 18(22秒) 間奏 ■10. 7 18~7 28(10秒) TOWN(てってってー)、ぽっぴっぽー 7 28~7 38(10秒) 溝ノ口太陽族 7 38~7 46(12秒) 崖の上のポニョ 7 46~7 47( 1秒)伯方の塩 ■11. 7 48~7 58(10秒)smooooch・∀・ 7 59~8 09(10秒)ダブルラリアット 8 10~8 30(20秒) ってゐ!~えいえんてゐver.~ ■12. 8 30~8 39( 9秒)炉心融解 8 40~8 50(10秒)おジャ魔女カーニバル!! 8 50~9 02(12秒)青く燃える炎、ザ・レギュラー 9 02~9 12(12秒)ハンマー状態 ■13. 9 12~9 32(20秒)RED ZONE 9 32~9 43( 9秒)間奏 9 44~10 06(20秒) カオスパート前半 ■14. 10 06~10 26(20秒) カオスパート後半 10 26~10 46(20秒) Don t say “lazy” ■15. 10 47~11 10(23秒) 時報 11 14~11 41(27秒) Reach Out To The Truth(ペルソナ) パート分けの固まり案1 ■01 0 00~0 18(18秒) タイトル(無音部分) 0 19~0 38(19秒) ブラック★ロックシューター ■02 0 38~0 59(21秒) Heavenly Star 1 00~1 21(21秒) Do-Dai 1 21~1 30( 9秒)みwなwぎwっwてwきwたwww&Under My Skin ■03 1 31~1 41(10秒)ナイト・オブ・ナイツ&ダンシング☆サムライ 1 41~1 52( 9秒) サンドキャニオン 1 53~2 02( 9秒)スカイハイ&ポップスター 2 02~2 13( 9秒)Got The Groove(死にたい!) 2 13~2 23(10秒)亡き王女の為のセプテット ■04 2 24~2 35(11秒) Bad Apple!! feat. nomico 2 35~2 44( 9秒) 俺ら東京さ行ぐだ! 2 45~3 06(21秒)RAINBOW GIRL ■05 3 06~3 27(19秒) Starry Sky 3 27~3 48(21秒) Hello Windows 3 49~3 59(10秒) 最強パレパレード ■06 3 59~4 12(13秒) 空 4 13~4 33(20秒) celluloid 4 34~4 55(21秒) 初音ミクの消失 ■07 4 55~5 17(22秒)ライオン 5 18~5 51(33秒) 星間飛行 ■08 5 51~6 10(19秒) ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ- 6 11~6 21(10秒) promise(ゲッダン) 6 21~6 34(13秒)魂のルフラン ■09 6 34~6 44(10秒)ワールドイズマイン 6 45~6 55(10秒)おてんば恋娘 6 56~7 18(22秒) 間奏 ■10 7 18~7 28(10秒) TOWN(てってってー)、ぽっぴっぽー 7 28~7 38(10秒) 溝ノ口太陽族 7 38~7 46(12秒) 崖の上のポニョ 7 46~7 47( 1秒)伯方の塩 7 48~7 58(10秒)smooooch・∀・ ■11 7 59~8 09(10秒)ダブルラリアット 8 10~8 30(20秒) ってゐ!~えいえんてゐver.~ 8 30~8 39( 9秒)炉心融解 ■12 8 40~8 50(10秒)おジャ魔女カーニバル!! 8 50~9 02(12秒)青く燃える炎、ザ・レギュラー 9 02~9 12(12秒)ハンマー状態 9 12~9 32(20秒)RED ZONE ■13 9 32~9 43( 9秒)間奏 9 44~10 00(16秒)カオスパート前半 ■14 10 01~10 26(25秒)カオスパート後半 10 26~10 46(20秒) Don t say “lazy” ■15 10 47~11 10(23秒) 時報 11 14~11 41(27秒) Reach Out To The Truth(ペルソナ)
https://w.atwiki.jp/higumix/pages/39.html
ハワイ ジャンル 関連サイトなど ハワイ(MAD製作者)とは (ハワイマッドセイサクシャとは) - ニコニコ大百科 関連タグ マイリスト nicovideo_mylist エラー ( マイリストURLの取得に失敗しました。正しいURLを入力してください。 ) 最新作 代表作 コメントはこちら 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/higumix/pages/3.html
更新履歴 取得中です。 ここを編集
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/454.html
前回 Miwotsukushi3 事後。あぁ、なんて今にぴったりの単語だろう。 ベッドの上で目が覚めた時には、まだ圭ちゃんは眠っていた。 まぁ、あれだけ暴れれば、細身の彼じゃあ体力が持たないと思う。 辺りを見渡し、一糸纏わないこの状況を打破する布を探す。 ベッドの下に落っこちていたパジャマを発見し、トイレに向かいながら上を羽織った。 下腹部の違和感。いつもと違って躰が重い……。 「あ……」 用を足そうと座って気が緩んだ瞬間、どろりとしたモノが排出された。 思わず腰を浮かせてそれを確認してしまう。白と透明が半々の、固体と液体が半々のものが付着している。 昨日圭ちゃんと性交をした証拠。私は愛してくれた証拠がここにある。 「……まさか受精なんてしてないわよね」 安全日とは言え、百パーセントしない訳じゃないことは知っていたので、今更不安が頭をよぎる。 これからはコンドームなるものがあった方が良いわけだけど、どちらが用意すれば良いのだろうか……。 女性の尊厳から言えば、圭ちゃんにしてもらいたいわけだが、圭ちゃん自身が乗り気でないのは分かっている。 誘った方のマナーとして、やはり部屋に備えているべきかもしれない。 する事を済ませてトイレを出た私は、朝食を作ろうと冷蔵庫を開けた。 適当に卵やらハムやらを取って、台所に並べる。 時刻は十二時半。訂正しよう。昼食のために私は冷蔵庫を開けたんだ。 油で熱せられたフライパンに、卵の水分が弾かれる。ばちばちと大きな音が耳をつんざく。 「……おはよう。詩音」 乱れた髪をいじくりながら圭ちゃんが台所を覗く。まだまだ睡眠が欲しいのか瞼が重そうだった。 「おはようございます、圭ちゃん。昨日はお疲れ様でした」 フライ返しを掲げてウィンクしてみせる。あー、なんかマンガに影響されやすいお姉みたいじゃないか。 「うっ……、そう言われると恥ずかしいじゃねえかよ」 本当からかい甲斐のある人だ。一番血が通いにくい耳たぶまで真っ赤になっている。 「ふふ。昨日の圭ちゃんはまさに獣でしたからね。あんなこっぱずかしいセリフまで言っちゃってー」 フライ返しを握ったままくるくる回して圭ちゃんを挑発する。 どうも目を合わすことも恥ずかしいらしく、視線が床へと落ちている。 「昨日のこと考えたらまた濡れてきちゃいましたよー、圭ちゃん」 「嘘をつけ」 そこは冷静なのか、と心でツッコミを入れる。 「まぁ嘘ですし」 痴女と思われるのは嫌だったので、私もあっさり認める。 こんな所で圭ちゃんをからかえるとは思わなかったので、自然気持ちが高ぶる。 鼻歌も歌いながら体をキッチンへと戻した。 瞬間、目に入る。異臭を放つ真っ黒い異物がフライパンにこびりついていた。 「……」 しばらく静止した私に、圭ちゃんがなにか私へ言葉を投げかける。 だが、何を言ってるかまでは識別できない。依然プスプス焦げ続ける異物を見つめるだけだ。 とりあえず火を消す。青い炎が消えても余熱で異物は未だ焦げるのをやめてくれない。 水をぶちこんでやると白い水蒸気がぼわっと発生し、視界が軽く塞がれる。 また圭ちゃんの声が後ろで起こった気がするが気にしない。 フライ返しで何度か削ってやるとその異物は剥がれた。あぁ忌々しい。さっさと流し台にでも押し込んでおこう。 「詩音、俺あんま腹減ってねぇから……、な?」 ……それは慰めと言うより、終止符ってやつだろう……。 このフライパンを振り回したい気分だが、それをぐっと堪えてため息を漏らした。 しばらくは圭ちゃんの中に、料理下手のイメージが定着するのかなぁ……と思いながら。 いや、昨日の夕食で多少評価は高いと思うから……って、あの時は味なんて考えられる状況じゃないか、と勝手に焦っていると部屋のチャイムが鳴った。 園崎の黒い奴らが住むこんなマンションにわざわざ足を運ぶと言えば一人しか居ない。 「詩音、誰だ?」 「黒いのの親分ですよ」 はぁ?、と聞き返す声を流しながら、私は玄関戸の小さな窓を覗いた。 大柄のサングラス髭オヤジが、最近の小学生に見せてやりたいほどの『気を付け』をしている。 とりあえず他の園崎関係の奴じゃないことだけ確認して、私は扉を開けた。 「お迎えに参りました、詩音さん」 開口一番ドスの効いた低い声が唸る。 明日の朝まで離れる、と言った割にはえらい遅く来たもんだなと思う。 空気が読める、と言うかヤクザらしくない、執事のような一面がある。 執事よりも格段にボディガードの名称が似合う彼の顔を見てると、ふと余計なことを気付いた。 あんまり空気読めてるから気付きにくかったが、私を学校行かせるなら当然早朝に来るはずだ。 てめぇ、絶対私が登校しないことを前提に行動してるだろう。 残念なのは、その前提を私が確実に消化してしまっているので、これからも葛西は私の不登校癖を踏まえて関わるのだろう。 絶対いつか見返してやろう、と切りをつけて私は圭ちゃんを呼んだ。 ピンクの寝間着で登場し、葛西を見つけてかすぐに引っ込む。 そりゃぁ、罰ゲームとは違う恥ずかしさがあるから、コントのような一連の流れも至極納得できた。 「妙に可愛らしい格好でしたね」 口元を緩めて葛西が言う。幾らこの葛西と言えども、圭一の一挙一足は面白みを感じるらしい。 「私のチョイスですからね、なかなか似合ってるでしょう」 「ええ」 小さく頷きながら、またサングラスで若干隠されている表情が明るくなる。 事実、もうちょっと男の子向けのモノもあったが、そこは家の主の権限として圭ちゃんに無理をしてもらった。 お陰で一時期の目の保養と、しばらくのからかうネタが出来たので、大成功と言えるだろう。 引っ込んでからなかなか反応がなかったと思うと、自分の服を着込んで圭ちゃんが再登場した。 葛西にちらりと目線を配る。葛西がわざとらしく視線を避ける。圭ちゃんの目が一瞬絶望を映した気がした。 「圭一さんも雛見沢にお戻りになりますよね?」 顔を背けたまま葛西が言う。意外としつこくいたぶるモノだ。 「あ、はい」 力のない声で圭ちゃんが答える。肩が下がり、視線も下方修正されて見るからに面白い。 この反応が一層楽しませているのを気付くのは、一体どれほど先なのだろう。 「行きましょう、圭ちゃん」 自然明るくなった声で私は扉を開ける。 右手で握った圭ちゃんの温かさを感じて、私は小走り気味に駆けだした。 数十分車に揺られて、自然の度合いが増すごとに記憶にある道になっていく。 別に幾多の道に分かれている訳ではないが、周りが木で囲われている分、どうしてもすべてが似通った風景となり覚えるのが難しい。 それでありながら記憶にある道とはどういう事だろう。 こんな遠くまで遊びに来たことはないはずだ。 だが既視感のような感覚がある。ふわふわとして少し気持ちが悪い。 「既視感か……」 ならばこれは梨花ちゃんの言う別の世界で体験したことなのだろうか。 どれも同じに見える木々を、俺が『一度見た』と特別にするのはそんな理由なのか。 視線を窓から前方の助手席に座る詩音へと移す。 詩音も俺のような感覚を沙都子の時に感じたようだ。 恐らくは俺のように種明かしはされていない。 いや、たとえされていたとしても、俺でさえ半信半疑なのだから、詩音だったら冗句と片づけるかもしれない。 だが確かに感じる既視感――おかしな表現だとは自分でも思う――で、詩音は何かしら行動を修正している。 本人が語る沙都子の件だけかもしれない。 しかしもし俺を好いているのもその既視感の影響があるなら……。 やはり俺は心から詩音に愛を与えられない。 そんなあやふやで人の気持ちは背負えない。 無駄に頑固だと、冗長に理想論だと分かっているけど、やはり俺は俺に逆らえなかった。 既視感の霧の記憶から、確固な実体を持つ記憶になっていく。 この道を進めば、すぐ通学路に出るはずだ。 時間はさすがに帰宅時間と重なってはいなかった。 教室の掃除を終えて、そこらを駆けながら帰ってもずいぶんお釣りが来る頃合いだ。 魅音と待ち合わせをする水車小屋が見えてきた。 ここを通り過ぎれば後少し……と、車は減速し、葛西さんはハンドルを左に切る。 この道の先には一つしか建物はない。 「園崎家に寄るんですか?」 魅音の家とは言わず、あえて他人事のように言う自分に驚いた。 「私がちょっと……。圭ちゃんも付いてきてもらえますか?」 「ん。お、おう」 魅音と喧嘩別れして丸一日が経っている。本当なら朝仲直りしておきたかったのだが、それが叶わなかったのである意味機会となるかもしれない。 詩音の用が気になる所だが、あまり魅音と関係ないことなのだったら、俺は彼女の部屋に行き解決するのも一つの案か。 どちらにしろ腹はある程度括った方が良いだろう。 詩音の後ろを付いていくと詩音が茂みの中へと入っていく。 玄関とは方向が反対だったのだが、恐らく別の入り口があるのだろう。 青々と色づいた茂みを払いながら、俺は奥へと進んで行く。 所々が朽ちている木製の戸を開く。 手入れがされていない茂みがまた現れ、二人は身をかがめて進んでいった。 軽快に進んでいく詩音に対し、圭一は肌が露出している部分を中心に傷を負いながら付いていく。 枝の先やらで引っかかれた皮膚が痛い。 慣れている詩音には造作ないことだったが、圭一は悪戦苦闘を強いられたのだった。 「ストップ、圭ちゃん」 前を歩いていた詩音が止まる。差し込む光の量から出口が近いことを直感した。 目を凝らして誰かが居ないかを確認する。 次いで顔を出して最終確認してから茂みの外へと出た。 何もない縁側の所で靴を脱ぎ、その下へと靴を隠す。 「見つかったら面倒なんで、慎重にお願いしますよ」 圭一へ釘を刺しておいて、詩音は再び歩き出した。 広い園崎家で居るのはお魎、魅音、使用人は今日居ないはずなのでその二人である。 半分は当たりであるし見つかる可能性はごく僅かだが、あの人は勘が恐ろしく鋭いので油断をしないのが当然だろう。 圭一はと言えば場違いにもただ広い家に口を開けて眺めているだけだった。 この先起こる修羅場など想像せず、一応足音だけ気を付けながら付いていく。 「ここです」 旅館のようにひたすら続くふすまのパレードの中、詩音は一つのふすまの前で圭一へと振り返る。表情は落ち着いていていて、むしろ精悍ともとれた。 「詩音です、入ります」 礼儀正しく詩音が正座をしてふすまを開く。圭一は中から死角となる位置から、状況を見守る。 ふすまの先には一式の布団があった。 圭一の言ったことのある魅音の部屋とは比べる必要もないほど広い。 宴会さえも楽に出来るような部屋だった。 その空間に生活をするための物としてあるのはその布団だけ。 中で上体を起こして存在する人物。白髪に覆われているものの、目が彼女を園崎の者であることを証明する。 その側で和服姿の凛とした女性が座っていた。彼女もまた園崎の人物であるのが一目で分かる。 「どうしたんだいアンタ、こんな所に来て」 絹肌の顔の中で、園崎の目、紅に塗られた唇が動く。 圭一は一度この女性を見たことがあった。 思いを馳せる。梨花ちゃんの件で雄弁を振るったあの時。あぁ、もしかしたらその時と同じ部屋かもしれない。 梨花ちゃんが山狗の元から抜け出し沙都子の救出を嘆願した際、あの梨花ちゃん臆することなく説教し、かつ魅音へと日本刀を振るった暴力団側の人。 魅音との会話から、彼女が魅音、詩音の母親であることがあの時分かった。 つまりこの場に園崎の三世代が集結したわけだ。 普段あれほど大きくーー畏怖ともとれるーー見える詩音がいかに小さく見るか。 雰囲気よりも一つ上の、オーラともとれるものが二人にはあった。 「お隣は……、ふふ、雛見沢のヒーローかい」 急に話を振られて、圭一は一歩足を退いた。 表情は微笑そのものなのに、なぜ自分はこれほどびびっているのだろう。 威圧、を初めて感じる圭一。我夢舎羅だった時ではなく、理性が繋がっているとこの人はこんなに怖いのか。 「なーにしにきたんね」 一喝。冷めていた空気が一層凍る。 雛見沢で一番の発言権を持ち――――否、雛見沢の発言権を掌握している者の声。 口調が『感情』を表し、視線が『対象』を表しているのだろう。 詩音――もちろんその先には圭一も含まれているのだが――に対する感情が隠されることなく伝わってくる。 「話しておきたい人がいるので」 そう言い、詩音は圭一へと顔を向ける。慌てて圭一が姿勢を正して正座した。 「……っと、前原圭一と言います」 辞儀をして、ちらりと視線をお魎へと移す。視線は既にこちらにはなかったが、代わりに茜の目が圭一をえぐっていた。 そして再び圭一は頭を下げる。 「圭ちゃんには私が雛見沢に来た時いつも可愛がってもらっています。過去、北条悟史についての一件がありますので、こちらから来させて頂きました」 過去愛した男と、現在(いま)愛する男の名を詩音は出す。 「勘当されているとは言え私も園崎の者です。母さんの時と似通った道だと思いますが、こう言った『関係』は報告した方が良いかと思いました」 「必要ないね」 声は予想に反し後方からした。 詩音は畳を見続けたまま。圭一は声の主へ振り返る。 青に近いパンツと黄色のシャツ。肩からモデルガンを入れるホールダーを羽織っている。 一蹴するような声は、詩音も含めて一番若く聞こえた。だが詩音には無い雰囲気を彼女は纏っていた。 「お姉、なかなか良いタイミングで来ましたね」 視線は畳へと一点に注がれる。魅音と目を合わせようとは毛頭もないらしい。 「ずっと傍観してたからね。暴走しそうだったから止めさせてもらったよ」 と言う姉。 「気付きませんでしたね、じゃあ庭から入った所からお見通しですか」 と問う妹。 「部屋にいたらそれぐらいは分かるよ、物騒だからね今は」 と答えた姉。 まるで姉妹の会話とは思えない憎悪めいたものがぶつかる。 圭一がすぐに魅音を特定できなかったのは、声色ではなくやはり目だった。 他の雛見沢の住人を見ても分かる。自分が住んでいた都会と、雛見沢とでは一番目が違う。 普段なら気にならないことでも、状況が変調すると途端視線に力がこもる。 当然それらを束ねる彼女らの眼力は、圭一からすればただ恐怖の一言だった。 「姉妹喧嘩なら余所でやってくれるかい。私たちの前でするような話じゃないだろう?」 母親が娘たちを叱る一般的な光景。圭一はそれさえにも身震いをする。 しかし状況だけ考えるなら茜の一言は助け船だった。 私たちの前から消えろ、と言うのだから少なくともこの二人からは離れることが出来る。 精神力が消える前に、少しでも消耗を減らした方が圭一のためになっているに決まっている。 「圭ちゃん、行こう」 声を掛けたのは連れてきた詩音ではなく魅音だった。 詩音は動かない。未だ正座で上体を下ろしたまま硬直している。 反論もなにも詩音から出ないのを見計らい、圭一が腰を上げる。 「じゃあ詩音。またな」 一声掛けてから、既に先を行った魅音の後を追う。ここで初めて自身が汗を吹き出していたのを圭一は知った。 「あれが新しい恋人かい?」 二人が去り部屋にはお魎と茜、詩音が在った。表情は崩れ、一家族の何ら変わらない会話である。 「新しい……とはやめてください」 悟史を少しでも否定するのを許さない詩音は言う。 だが『恋人』の箇所は否定しなかった。 「予定……ですけどね」 正座の脚を崩して詩音が続けた。 その表情はコミカルで、金魚を逃した後のような少女の顔だった。 「ふふっ、魅音の奴も入れ込んでるようだし……。前原の坊っちゃんもご苦労なこったね」 「あんのボンズのどこが良いと言うんじゃ」 お魎が唸るも声はどこか軽い。茜のように状況を楽しんでいるだけかもしれない。 「詩音が恋する男だ。そりゃあとんでもない大物に決まってるさ」 表情が笑顔となる。お魎も「くっ」と笑いを吹き出した。 「お願いだから魅音とポン刀で斬り合う真似だけはよしてくれよ? これ以上この刀に血を吸わせたくないからね」 魅音が頭首としての覚悟を見せた場面が茜の頭に浮かぶ。 だが当の場に居なかった詩音は、抗争で母さんが使ったのだろうと誤った方向に考えた。 「保証できませんね、圭ちゃんの為ならそれぐらいはするかもしれません」 豪快に詩音が茜の意見を吹き飛ばした。お魎の笑い声がまた漏れる。 「血じゃろぅか」 ひとつ鼻で笑い、同じく園崎家を勘当された茜を移す。お互いに名に鬼は入っていない。 だが血にはやはり『園崎』が脈々と流れているようだ。 「私と違って、圭一くんはカタギだよ? さすがに母さんも認めてあげんなきゃあね」 「分―かっとるわ、じゃかぁしぃ……。あの小僧を相手にする元気は残っとらんわ」 「圭ちゃんばかりは何をするか分かりませんからね。だけど敵に回さなければからかい甲斐のある人ですよ」 三者三様に圭一の評価を下す三人。 秘密の組織など言う少年漫画よろしくの展開を、迷うことなく信念を貫き通し救った中学生。 茜の例もあり、他が見えなくなるぐらい人情に熱い男を、園崎は好む傾向があるらしい。 「母親としてはどっちも応援したいけどね。私としては魅音と繋がって欲しいものだよ」 怒り混じりに出て行った少女の名前を出し、茜が呟く。 自分が応援されないことに詩音は肩を竦めて応えた。 「アンタは悟史くんのことがあったけど、あの娘が積極的になったのは圭一くんが初めてだからね。初恋ってのは本当実って欲しいわ」 これ以上自分に挫折をさせたいのか、と異議を唱えたいのを堪えつつ、詩音は生返事で会話を終わらせた。 お姉こと園崎魅音には様々な面でハンデを抱えていることを詩音は自覚していた。 確かに魅音は性別を意識させないような仕方で圭一と接してきたが、友好が恋愛に転するのは本当に小さなきっかけだ。 いつ圭一が魅音を女と意識し始めるかによるが、そこまで達すればあとは一気に魅音へと傾いてしまう。 築き上げたものが違う。なぜなら魅音は詩音よりもはるか前に自身の恋慕に気付き、鈍感な圭一へとアピールしてたのだから。 「それで諦める園崎詩音じゃないんですよ」 シニカルな笑いに確固たる信念が宿る。 笑い話であっても、詩音は冗談を一度もこの場で発していない。 それぐらい圭一が好き。例え姉――――、いや妹であっても取られたくは――――ない。 「葛西を待たせているので帰りますね。次会う時は、またさっきと同じ人連れてきますよ」 「じゃかぁしぃわ」 最後にお魎が笑い飛ばし、詩音はふすまの外に出た。 ひぐらしの声が少しだけ強くなった気がする。蝉の声も混じるようになってきた。 初夏の陽を浴びながら、今度は堂々と正門へと向かう。圭一が魅音と何をしているのか、考えようとはしなかった。 「待てよ、魅音」 一度も目を合わせられないまま呼びかけられ、連れてこられた俺は魅音の肩に手を掛けた。 その手を振り向きもせず払われ、魅音は構わず歩き出す。 どうなっちまったんだ、本当に。魅音はまだ俺のことを許してくれないのだろうか。 俺の方から行動を起こしたいのは山々なのだが、相変わらず俺は問題そのものが分かっていないのだ。あくまでも魅音に何らかの行為で傷つけてしまった、その程度の自覚しかない。 塾で学んだ知識は問題用紙が配られて初めて役に立つ。 俺は解答用紙に番号と名前を書いて、まだテストがどんなものか想像するにすぎない。 それでいて問題用紙は一向に配ってくれる気配がない。 刻一刻と試験時間は終わりに近づいているのに。 時間さえ分からない俺は、鉛筆を回して遊んでいろとでも言うのか。 ふざけるな。そんなことをするために、俺たちは綿流しを乗り越えたわけではない。 今度は肩ではなく手首を掴む。 それをも払おうとしたのか、魅音は掴まれた側の腕を大きく振り上げた。 そんなに俺の顔を見るのが嫌だったら、無理矢理にでも向かせてやる。 振り上げられた手を俺は大きく引いた。 独楽の原理で魅音は回転して、自然俺と視線が合うようになる。 魅音の顔は俺の想像とは違っていた。 今にも泣き出してしまいそうな、涙腺を必死に抑え込んでいる悲愴な顔。 歯を食いしばり、目の周りを赤らめて、瞳の中のこみ上げる液体が揺れている。 「離してよっ、圭ちゃん!」 拒絶をやめない魅音は、顔を背けて俺が掴んだ手を引きはがそうとする。 「私のことはもういいからっ。もう帰っていいよ!」 お前が連れてきたのだろう。と言うのは今はナシだ。 火に天ぷら油入れたら、いかに料理下手の俺――料理下手だからこそかもしれないが――でも大変なことになることは分かる。 魅音は今倒錯している。精神的に病んでいる状態かもしれない。 だから俺がこいつを守ってやらなければいけない。 雛見沢をこれから背負っていく使命のある彼女に、男として接せられるのは俺しかいない。 「もういいわけないだろ! お前は俺の――――――」 俺――――――の…………? 『魅音。俺とお前は仲間だろ? なんか困ったことがあったら話してくれよ』 飛び散った俺の弁当箱。転げ回った椅子。静まりかえった教室。何も言えない周りの面々。一人立ち上がり少年を突き飛ばした少女。 何を思い何を感じ何を痛み少女は少年を拒絶したのだろう。 何を厭と思い何を否と感じ何を真と痛み拒絶したのだろう。 『仲間』と言うのは素晴らしい言葉だ。支え合い、助け合い、励まし合う最高の繋がりだ。 だけど自らが支えられないなら『仲間』はどれほど重荷に感じる? 今自分がすることができないのに、今はただ救って欲しいだけの人に、『仲間』を強制することがどれほど鋭い刃となる? 正しいことが当然の委員長と言う役職。引っ張ることを前提の部長と言う立場。強いことが強制される頭首と言う運命。 俺はそんな彼女に、まだ「がんばれ」と促すのか? それが『俺を好いてくれた彼女』へ掛ける言葉なの……か? 「大事な……お前は、俺にとって今一番大事な奴だから! 放っておけないだろっ」 魅音を俺の体へと寄せる。前の晩こいつの妹を抱いた俺が吐ける台詞じゃない。 だが資格だの出来る出来ないだの、『俺についての問題』を考えるべきでないと判断した。 嘘偽りない言葉を吐け。素直になってみろ。そう脳が命令しただけの話。 こんな奴が女たらしになるのかな、とふと思った。 一時の感情に流されてその場しのぎの戯言を言って生きる。俺が一番恥じた人種なのだが。 だが今は考えないようにしよう。今はこいつのことだけを考えよう。 俺の胸で涙を流す緑髪の少女にとって理想の犬となろうじゃないか。 温もりが残った自らの手を眺める。 あれほど詩音や婆っちゃの前で萎縮していた圭ちゃんが、大胆にここまでするとは思わなかった。 鏡に映った私の顔は未だ目元が赤い。 ここ最近涙腺のダムが決壊しているとしか思えないほど泣いてばかりなので、この顔も見飽きてしまった。 このトイレを出れば、私は圭ちゃんの元に行かなくてはならない。 勿論嫌なはずがない。今すぐにでも走っていき、抱きつきたい気持ちでいっぱいだ。 ただ少しでも紙を潰したような私の表情を整えてから行きたいだけだった。 洗面台に手を置いて、鏡へと大きく前に乗り出す。 何度か顔の角度を変えて、確認を何度も実行し終わった私は、トイレの扉を開けた。 数メーター歩けば私の部屋。同時に私を圭ちゃんへと晒す行為でもある。 晒す……か。余程私は諧謔的になっているのか、自らを貶す発言が目立つようになってきた。 レナへと気持ちを吐露していなければ、果たしてこのレベルで済んでいたのだろうか。 まるで一度体験したことがあるかのように、私は悲惨な結末を鮮明に思い浮かべることが出来た。 思い出そうと脳が勝手に作動するとこめかみの辺りが痛くなる。 記憶と言うよりは躰に刻まれた記録のような文字列が、私にそれ以上の思考を妨げる。 それよりも圭ちゃんへと今すぐに足を動かせ、と信号が走る。 ドアノブを視認しろ。 ドアノブをつかめ。 ドアノブを時計回りへと回せ。 一歩右足を後退させろ。 右腕を引きドアを開けろ。 ドアノブを離せ。 前原圭一を視認しろ。 足を部屋へと動かせ。 動かせ。動かせ。動かせ。 起点もない。脈絡もない。その中で私は圭ちゃんの元へ走り寄り、そして抱きついた。 冷めてしまった体温を再び温めるように、私は強く彼を抱きしめる。 圭ちゃんは最初こそ戸惑っていたようだったが、ゆっくり私の背へと腕を回し慰めるように包み込む。 華奢だと思っていた圭ちゃんの躰が、厚く大きく力強い。 ベッドに座っていた体勢をそのまま押し倒し、私は全体重を圭ちゃんに預ける形となった。 重いかな、と一瞬頭をよぎったが、ここは女性としての沽券に関わるので、何も言わず甘えさせて貰う。 男子の汗ばんだ匂いや、シャツに付着したのだろう土の匂いが鼻腔を刺激するが、不快感はあまりしない。 匂いの元が圭ちゃんと言う情報だけで、脳が勝手に不快の信号を出していないのかもしれない。 それは妙に科学的でありながら、御伽噺のような可愛らしさを備えている話だ。 「温かい……」 体温の共有以上に私の体が熱を帯びる。 恥ずかしさから来るものなのかどうかは分からないが、血流が顔へとどんどん集まる。 好きな異性との接触がこれほど情熱的な感情を生み出すとは。 その感覚を楽しみながら、私は何度も体勢を変えて圭ちゃんに甘えた。 嫉妬。私はあまり雑学に詳しい方ではないし、ましてや漢字の起源だとか熟語の構成をとやかく語れる知識を持っていない。 だがこの『嫉妬』と言う単語は、私のような中学生にでも至極簡単にルーツを知れるのではないかと思う。 まさに読んで如く。嫉は女が疾風のように奔走する様。妬は『女友達に妬く』のように訓読みできる。 勿論この文字が作られた当時、女と言う偏が文字通り女性を意味していたのかと聞かれれば、私のレトロ脳みそが答を導き出してくれるわけじゃない。 だが充分それで意味をぶち通すことができる、とのことだけである。 魅いちゃんの行動はまさに嫉妬から来るのだろう。 詩いちゃんの予想外だった圭一くんとの接近に妬き、奔走しているのだ。 私自身魅いちゃんの恋慕には、かなり初期の状態から気付いているつもりだ。 伊達に常日頃から彼女と行動を共にしていた訳じゃないし、勘が鋭い私の事情もある。 しかし詩いちゃんがまさか圭一くんへと恋をすると思わなかった。 どうしても詩いちゃんイコール悟史くんの等式が頭にあり、無意識に圭一くんへと結びつけるのを拒否していた。 それを気付けず、魅いちゃんを混乱させたのは私の責任だろう。 私も、竜宮レナも前原圭一は好きだ。 だがその好きは、魅いちゃんと詩いちゃんのモノとは一線を画する。 私がその感情に気付いたのは本当にごく最近だ。 それまではそれこそ魅いちゃん達のように、男女としての、恋愛の好きだと錯覚していた。 だが違う。恋愛とは独占欲の派生であり、結局はエゴイズムから生まれる感情だ。 私は違う。魅いちゃんのように詩いちゃんが圭一くんを好き、と聞いただけで取り乱すような想いはない。 むしろ応援したい、叶って欲しい、と願う立場だ。 友愛、と言う単語は今の私にぴったりだろう。側にいたいと思うが、一緒に寝たいとは思わないのだ。 「それは恋愛と友愛を別個と前提した話だけど」 無音の部屋に私の生気のない声が響く。 友愛が恋愛のなり損ねとでも表現するなら、圭一くんを独占することを諦めた結果とするなら、また話は変わってくる。 しかし充分今私は満足している。抱きしめたい。キスをしたい。と言う色話に私は関係ない。 ただ傍観者として、時には助言者としてこの三角関係を見守るだけ。 止まらなさそうな暴走にいち早く気付き、歯止めを掛けるのが私に出来る仕事なのだろう。 大丈夫だ。それで私は満足しているのだから。 「うぅ……ひっく……、……っ」 だからこの涙も偽物だ。シーツを濡らすこれも贋物に決まっている。 満足している。満足している。私は満足している。 「うわああああぁぁぁぁん」 そう。私は満足しているのだから。 Miwotsukushi5へ続く
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/342.html
夜の帳が下り始めてくる頃。 涼しげな音と風の取り巻く古手神社の境内にひとりの少女がいた。紫雲のような髪がふわりと浮いては 頭に見える角を見え隠れさせる。 少女は竹箒を手に持って空を見上げたまま、じっと静止していた。 上腕部分を露出した奇妙な装いの巫女服ではあったけれど、神社を背景にしたその少女の姿はいかにもといった感じで神聖な雰囲気を醸し出している。柔和な微笑みがそれを助長して近寄りがたくも見蕩れる姿と なってそこにあった。 ふと少女の顔が赤くなって、同時に竹箒を胸に抱え込むようにした。 (あぅあぅ……困るのです困るのです……) かすかに色を残す夕陽に当てられたわけでもあるまいに、少女の頬は遠めからでも分かるほど上気していた。 そして躊躇いがちに周囲を見渡すと、そそくさと神社の裏へと向かった。 穏やかに流れる時間を太陽の沈む軌跡に重ね合わせながら、ゆったりとした散歩を楽しむ少年がいた。途切れ途切れに歩を進める様がそれをよく表していて、気になるものを見つけては何度も立ち止まっている。 真っ赤なノースリーブのシャツとこげ茶色のハーフズボンは、少年らしく明るさと活発さを強調して見えるが、どうにも風格のある歩き方が少し違和感を生み出しているようだった。もっとも当の少年はそれを欠 片も気にしていないようではあったが。 (たまにはこういうのも悪くないな) 夕焼けに滲む空を見上げながら長く長く伸びた影を伴って進んでいく。 (そうだ、あの景色を見にいこう) 散歩にありがちな気まぐれさを指針として少年は目的地を決めた。 遠く目を細めた先にひっそりと佇む古手神社。 (困るのです困るのです……) 雑草の生い茂る神社の裏。 少女は、そこに数個積まれていた金ダライの上に腰掛けている。竹箒を相変わらず硬く抱きしめながら、心底困惑している顔を浮かべていた。 何か溢れ出しそうなものをこらえて、身体をぎゅっと丸める。恥ずかしさと、かすかな怯えとが入り混じって非常に頼りない表情になっている。関係はないのだろうが、帳の下りた裏山に蠢く木々たちを恐れているようにも見えた。 数分、どこを眺めるまでもなくぶるぶると身体を震わせていた少女は、やがてうっすらと涙の浮かぶ瞳を開いた。すると、はぁぁ……と恐る恐るといった様子で吐いた息に、わずかに出した舌先を絡 ませてそこからぽたりと一つ唾液を落とす。 火照った顔は、打って変わって、たがが緩んだように妖艶な微笑をかたどっていく。 少女は竹箒を股の間に挟みこんでこすり付けていた。 (ん? 今何か……) 境内へと続く階段を上り終わり、雛見沢が一望できる場所に向かおうとした少年は、ひぐらしの鳴き声ではない音を耳に捉えた気がして立ち止まった。 (気のせいか……) と思った矢先、また聞こえた。 もう陽の落ちそうな時間、寄り道をしていては目的である景色を見ることはできない。 それでも気になった少年は、何を思うでもなく神社の裏へと足を向けた。 「あぅっ……はぁぅ……あぁぅっ」 股間を弄る手法を竹箒から自分の手に変えた少女は、声を隠そうともせず、その行為に没頭していた。少女にとっては性器から得られる刺激が限りなく大きくて、声などさほど問題にしていないのだろう。口の端から涎を垂らして時折舐めとる、その間も絶やさない笑顔からも、快感に身を溺れさせているのがありありと分かる。 熱い感情がじわじわ上り詰めていくにつれて、袴を通り越し、じかに性器をいじりたいと思い始める。袴の紐を雑に緩めて手を滑り込ませた。篭った熱気が指の付け根を軽く刺激して、鳥肌が立った。 「はっ、あぁ……! ぅんぅ……っ」 顔を横向けて、最初のあまりにも過敏な反応に備えて目を閉じる。その反応が過ぎ去ると、一瞬満足そうな笑顔を浮かべて脱力する。軽く達したのか、両膝を突きあわせたまま宙に浮いた脚がびくっと何度か跳ねた。 それでも少女の手は止まることなくさらに奥へと導かれていく。 何故か竹箒は脇の下に挟んだまま手放そうとしていなかった。 「誰かいるのかー……」 「あぅ!?」 「ん? 羽入? って……」 「け、圭一……」 BOY MEETS GIRL─果たして、少年と少女は出くわした。 「…………」 「…………」 押し黙る圭一と呼ばれる少年と羽入と呼ばれた少女。 沈黙がやぶ蚊のように二人の間を飛び交っていた。 「あ……」 先に口を開いたのは羽入だった。 「あぅあぅ……」 が、これは文字通り口を開いただけだった。状況の進展になっていない。 恥じらい戸惑う羽入の姿は、実は最初はそうと分かっていなかった状況を圭一に的確に判断させるものとなった。顔が赤くなる。 「じゃ、邪魔したみたいだな……」 混乱の中、咄嗟に口を突いた言葉は逃げるための言い訳だった。 きまりが悪いのは間違いなく圭一で、その居た堪れなさから導き出した次の行動。 「そ、それじゃ」 「あ、まっ……け、圭一っ」 「うわっ!?」 何となく逃げられては困ると判断した羽入が圭一のシャツを掴み、引き倒した。 袴が不自然にずれた羽入が、別段そんな意図はなかったようだが圭一の上に乗ってしまう。もう言い訳などできない格好だった。 どうせ見られたのだ。 このまま帰すと明日から気まずくなりそうだし、何より羽入は圭一の邪魔によりまだ達していない。最近身体が疼くので行っていた自慰だがそろそろ回数を増やすだけでは満足できなくなってきたというのもある。 これは責任をとってもらうべきだ、と羽入は決断した。 これから圭一に協力を求めるに当たって自己本位の欲望が多数を占める言い訳だった。 目下、男、という存在があるせいで自慰の名残以上に蕩けた頭でそう考えた羽入は、勿論それに気づいていない。 戸惑いによる瞳の揺らぎは完全になくなり、座っている。 そんな羽入の思惑などつゆも知らず、圭一は今とられているマウントポジションをどうにかして解こうとする。 「あぁうぅ……」 「…………」 圭一がじたばた暴れたせいで羽入の敏感な身体に刺激が与えられる。 色っぽい吐息を聞いて思わず硬直する圭一だった。 「あぅあぅ……圭一ぃ……」 羽入が圭一の手を取り、胸を掴ませる。 「な――っ!?」 「あぅっ……」 反射的に引っ込められた圭一の手を身体に折り重なるように追いかけて舐める。手首から上に向かって、分かりやすい目標である手相を舌でなぞっていき、指の付け根、腹、指先と口に含んだ。 「んちゅ…んむ……っくしゅんっ!」 「…………」 「あぅあぅ、ここが外だってことを忘れていたのです。圭一、神社の中に入るのです」 「…………」 「……しょうがないのです……。こういう経験は初めてだったのですね。大丈夫なのですよ、ボクがちゃんと教えてあげますですから……あぅあぅ♪」 うきうきと言って呆然自失する圭一を引きずっていった。 「はっ? ここはっ? ……ってなんじゃこりゃー!」 圭一が目を覚ました(気絶していたらしい)場所は、普段、村の寄合という名の飲み会が開かれる古手神社の大広間だった。雛見沢分校の教室ほどもある畳敷きの部屋の中央、ぽつんと敷かれた布団の中にいた。 「おいおい……っうぅっ!?」 男としてなかなか様になる怪訝な表情が一瞬で掻き消えて、情けない声を出す。 「んむ。圭一、起きたのですか? というかあれくらいで失神するなんて先が思いやられるのですよ。もっと頑張ってくださいのです。あぅあぅんちゅ」 「うあ!?は、羽入か……! 何してやがるっ……」 圭一は全裸だった。衣服は枕元に丁寧に畳まれており(ちゃっかり枕が二つある)、下半身だけを隠した掛け布団が一人分盛り上がっている。 そこに羽入が入っているのだった。 圭一の質問への答えは性器をしごく速度を上げることでそれとする。 「んぁむ、ちゅぱっ ぁむんっ」 「くっ、うぁっ!」 状況ではなく快感に頭がついていっている圭一は羽入の行為を拒めない。 びくつく腰が掛け布団を跳ね除けていく。 熱心に頭を動かす羽入は、圭一のように裸ではなく巫女服のままだった。 「あぅー…びくびくしているのです~。圭一。今は起きてるのですから射精そうになったらちゃんと言ってくださいなのですよ~……ぺろ」 うっとりとした表情で尿道付近を嘗め回しながら上目遣いで圭一を見つめる。 「い、今ってなんだよっ!」 当然のごとくその問いは無視して行為に没頭する。 右手で陰嚢を弄びながら左手の親指で裏筋を押し上げるようにして刺激を与えていく。 亀頭はカリ部分にちょうど唇が当たるようにして口に含んでいた。口内では小さな舌が忙しなく動き回って射精を促そうとする。 「で、射精るっ――!」 それを聞いて、羽入は喉奥まで性器をくわえ込む。 勢いよく発射された精液が咽喉を打つ。その刺激で嘔吐感が込み上げてくるが、しゃくりあげることでそれを抑えた。必然的に精飲行為をしなければならなかった。勿論羽入にとってはそれが目的であったわけだけれども。 「くあっ……う……あ」 随分長い射精時間だった。 一人でするときとは出る量が違う。搾り取られるような感覚に何もかもがどうでもよくなってくる。何か既視感のようなものがあったことにわずかに疑問を持つがそれすらも…。 「ふはっ。二回目なのに凄い量なのです。あぅあぅ」 「二回目なのかよ!?」 どうでもよくならなかった。寝ている間に一度抜かれていたようだ。 「あぅあぅ、美味しいのですよ」 羽入が圭一の上に跨る。 「……なんでこんなことに?」 「気にしたら負けなのですよ」 「何に?」 「ボクに」 どういう理屈だろうか、と羽入を見上げつつ思う圭一。そこでいつの間にかこの状況に慣れてしまっている自分に気づいた。突っ込み所は色々あるに違いなかったが、まぁいいか、という気持ちの方が大きくて今更何をどうしようという気も起きない。 こういうことは初めてで、恥ずかしさと緊張から何もできなくなるほど混乱するものだと考えていたのだが、羽入のあけっぴろげな雰囲気に圭一も少なからず影響を受けたようである。 「さ、ボクに勝ってくださいなのです」 巫女服の上着を脱いで乳房を露出させる。 「知らないことはボクが教えてあげるのです。ただ男女の性交において、極論挿入だけを覚えていれば問題はないのです。それ以外えっちに普遍性はなく……ボクが圭一に教えてあげられるのはボクが感じる場所だけなのです。できれば、それを見つけていってほしいと願うのですが……、無理は言わないのです……あぅっ?」 圭一が羽入の胸に触れる。 くすぐったそうにして圭一を見咎めるが、表情は悦んでいた。 「あぅあぅ……でも、圭一が欲望そのままにボクを犯してくれれば……自然と分かりますです。そういうものなのです」 「えらく経験ありそうな物言いじゃねぇか」 「あるのですよ」 さすがに予想していなかった答えのようで、圭一は動作を止めた。驚愕に顔を作ったまま。そして聞いてしまった。 「だ、誰と……?」 「……そういうことを聞くからみんなにデリカシーがないって言われるのです」 「いや、その…すまん。まさか、と思って」 「女の子には色々あるのですよ。あぅあぅ」 「勝てる気がしないんだが……」 女性遍歴としては中学生らしくゼロに近く、性交も知識としてしか知らない行為。それをどう見ても自分より年下である羽入が経験していたことに、殊にこの状況下ではどうしようもない差を感じたからだった。 「あぅ? 圭一にしては珍しく弱気なのです? いつもの部活みたいに欲望むき出し、下種丸出しであればいいのですよ?」 「あー凹んだ萎えた、泣いたよこのやろー。というかお前そんなキャラだったっけー?」 「もう。しょうがないのですね、あぅあぅ。ボクが勝手にやってしまうのです。でも圭一にもたくさん触ってほしいのですよ?」 「あーもう! わかったよっ」 羽入と体勢を入れ替える。 改めて認める、胸をはだけた羽入。袴の赤が目に痛いのに対して羽入の肌は真っ白で。髪の毛はどこか見るものを落ち着かせるような紫の色。先ほど触って感じた掌に収まる柔らかさを再び手にする。ふよふよとして中心の突起がつぼ押しみたいになって気持ちがいい。 「あっ、あっ、あぁぅ」 なぜ自分だけ裸にしておいて羽入は服を着たままなのか、少し気にしたが脱がすことに醍醐味を感じる圭一(と言っても妄想の中でだけだったが)としては悪くなかったようだ。 まさかそこまで考えていたのだろうか、という圭一の思いつきもどこ吹く風、羽入は胸を揉まれる感触に酔いしれているようだった。 そのうち羽入が愛撫だけでは物足りなそうな表情で圭一を見つめていたので、恐る恐る自分の粘膜をきめ細やかな肌に馴染ませていく。乳房を掌で弾ませながら、それの描くラインを目で追う。遅れて舌先が綺麗な円形を辿っていく。 「あぅ……んぅっ……はっ、あっ……」 羽入の喘ぎ声を耳に心地よく聞く。 二度射精した圭一の性器もだんだんと回復し、膨張していった。 「圭一……、下も……」 「あ、ああ」 と応えても袴をどう脱がせばいいのか分からなかった。 それに気づいてか羽入が自分で袴を下ろしていく。その間圭一は成り行きを見守っていたが、羽入は快感の並みが途切れたことがもどかしかったのか圭一に抱きついてキスをした。 「ふぁぅん……むぅ…あむ……ちゅ……」 「んんんっ」 唇を奪いつつ袴を脱ぎすてて再び圭一の上に乗る格好になる。 圭一は、絶え間なく口内を満たそうとする羽入の小さな舌、吐息、唾液に狂おしいまでの興奮を覚えた。羽入もそうである様子がキスを通して伝わってくる。あまりに深く底のない性欲に恐怖と同時、どこまででもというその場の快感のみを求める思春期特有の感情が湧き上がった。 唾液の糸が、今本能的に危なっかしい二人の様子を象徴しているように、刹那の煌きを持って互いをつなぐ。 視覚が目の前の相手以外の全てを除くことで羽入に、圭一に集中され、心身を焦がすような瞳でもって二人は次の行への意思確認をする。 圭一は全裸だったが、羽入は足袋だけを未だ脱がずにいた。脱ぐ気もないようだった。 羽入は蕩けるような表情で圭一の性器を見つめていたがすぐに挿入させることはなかった。股を圭一の方に向けるようにして手で身体を支える。そそり立つ性器に擦り合わせると、キスよりも淫靡な音が広い部屋に木霊していく。圭一はその響きように少し恥ずかしさを覚えたようだったが、羽入は気にしていなかった。 「あぅ……あぅ……あぅっ、き、もちいい…のですぅっ」 「お、俺も気持ちいい、ぞ……くっ」 羽入が腰を上に動かすたび、亀頭が陰核に引っかかり一際鋭い刺激となった。 乳首、陰核の控えめな自己主張の割りにはそのうちにとんでもない欲を隠している。 とりあえず羽入を通して見た世間一般の女の子のイメージが圭一の中でそう固まった。 (男だけじゃないんだな……) そう思う間に、羽入の、ひくひくと開きかけた陰唇から大量の愛液が流れ出ていた。それが潤滑油となったのは言うまでもなく、同様に羽入の腰の上下運動が激しくなったのも言うまでもない。そして快感も。 全てが連鎖反応。 終わるには、そろそろ堪えきれなくなってきた絶頂の瞬間を迎えるしかないのだが。 真正面、髪の毛を振り乱し悦楽に酔いしれる羽入にはまだ余裕がありそうだったので、もう少し我慢するしかなかった。 「あっ、はぁんっ、け、いいちぃ……、我慢し、なくてっあっ、いいのっですよ……?あぅっ」 圭一の心中はこんなときでも羽入に感づかれるらしい。 そのことに驚きはなく、むしろその言葉によってますます自分が先に達するわけにはいかなかった。もはや意地だけで耐えている様子だった。 「はっ、言ってろっ……。羽入、こそっそろそろやばいんじゃねぇのかっ?」 腰の動きは止めず、羽入は圭一を妖艶な表情でもって見る。その中に、何かを探るような顔色が浮かび、やがてそれは何かが満ち足りた微笑になった。 普段とのギャップを感じさせるその顔に心を奪われそうになった圭一は、危うく射精してしまいそうになった。どうにか堪えて今まで以上に気を張った。そこでようやく、吐息や水音から漂ってくる羽入という女の匂いを感じ取った。 胸を掻き毟られるような思いが頭に昇っていく。 「んっ、んっ、んぅっ……。そんなこと言っていいのですか……圭一?」 そう言って羽入が腰を休めたので、耐えられた。 「あぅあぅ……こんなにびくびくして苦しそうなのに、まだイかないなんて……なかなかなのです……。よっぽどボクの中で果てたいのですね、あぅあぅ。挿入なしでもう一度イってもらおうと思っていたのですが……」 圭一の性器を左手で掴み、右手で自分の秘唇を押し広げる。 ぬちゃ……と艶かしく垂れた羽入の愛液が先端から圭一のものを濡らしていく。 羽入はそれを見ず、圭一だけに視線を送る。吸い込まれそうだと圭一が思ったのは、この状況下では的外れではなかった。 そしてそう思った時点で。 「すぐにイっちゃっても知らないのですよ……?」 来る快楽に心身全てを持っていかれるのは当然だった。 「ぐっ!? あぁああああっ!?」 「あぅっぁあうぅぅっ!」 躊躇なく羽入の膣へとその存在を埋められた圭一の性器は、四方八方から羽入の締まりによって激しく責められ、自然逃げ場もなく、先が奥に到達したと同時に精を吐き出した。 何度か痙攣しながら絶頂を味わう。 羽入も圭一ほどではないが身体を震わせていた。 結合部分からあふれ出してくる白濁液の量が半端でなかった。 「はぁぅ……圭一、すごいのです……。すごい量と勢いなのです……。図らずもボクも軽く達してしまったのですよ、あぅ……」 恍惚とした表情に大量の汗が光る。 「あぅっ、まだ出る……のです……はぁ」 夢うつつといった瞳で圭一を見つめる。 「はっ、はっ、はあっ」 ようやく射精の収まった圭一が一気に脱力して呼吸を整え始める。 「だから言ったのですよ、あぅあぅ」 と、能力をわきまえず、人の忠告も聞かず背伸びをした子どもに現実を見せることでしか考え違いを直せなかった自分を心苦しく思いつつ、 「大丈夫ですか……圭一?」 最後は優しく窘めるように語り掛ける羽入だった。 たとえでもなんでもなく子どもはまるっきり圭一だった。それに気づいて、今更ながら羽入の男女関係における優位性を実感として得た。完全に負けた気分だった。 「あぁ……、まさかあんなにどうしようもなく気持ちいいものだとは……」 だから、自分を抑えることのできなかった感情を恥じることなく圭一は口にする。 「あぅあぅ。そう言ってもらえると嬉しいのです」 羽入は照れた笑顔を浮かべて応えた。 それを見て、ふっと疲れを滲ませて笑う圭一だった。 が、ここで何かがおかしいことに気づいた。 羽入が一向にどこうとしないのだ。圭一の性器は羽入の膣内に挿入されたままである。射精したのは三回目だし、量もとんでもなかった。すっかり硬さを失っている。羽入もそれは理解しているはずだった。 「羽入。終わったならどいてくれ」 「はいなのです」 「…………」 「あぅあぅ?」 面に満ち満ちる笑いの感情。 「羽入……?」 しかし圭一はそれをそのままの意味にとれなかった。 「まだ終わってないからどかないのです。あぅあぅ♪」 「…………」 ――もう一度元気にさせないといけないのです。あ、舐めた感じだと圭一は五回は問題なくいけると思うのです。だから安心するのです。あぅあぅ――。 楽しそうに解説する羽入の声を靄がかかったように頭の中で聞きながら、圭一はなぜ今日散歩に出てしまったんだと自分の行動を後悔していた。 大広間へと続く襖が僅かに隙間を作っていた。 「随分と楽しそうなことしてるじゃない……。羽入……圭一……くすくす」 暗闇に真っ黒な髪を溶け込ませている一人の少女。 邪悪に笑って誰にでもなく語りかける。無理に作っているようでもあった笑顔だった。 見ると、襖から漏れた明かりに床がてらてらと光っている。 少女の股間から垂れ落ちる滴が小さな泉に波紋を作った。 「はっ!? こここれは違うのよっ。べ、別に羽入と圭一のエッチ見て興奮したわけじゃないんだからねっ。お、お漏らしでもないわっ。これは、そ、そう! 涎よ涎! きき、聞いてるのーっ!?」 真っ赤な顔をして一人騒ぐ少女であった。 無論声は潜めていたのだが。 <続く> 羽入のポニテが見てみたい
https://w.atwiki.jp/watanagashi-sai/pages/15.html
RT(疑心暗鬼モード) RT中の演出と期待度 150G完走RTについて150GRTのフローチャート 前原圭一が大石刑事と同じ内容(数パターン有)の話を延々と長電話する。 RTの純増は約0.75枚/G ループ率は約50%(設定差は誤差) 30G/50G/90G/150Gの完走型RT CZで入賞した突入契機小役によって継続するゲーム数が異なる。 ○30G リプレイ・ベル・リプレイの入賞(レベルアップ失敗時) ○50G オレンジ・ベル・リプレイの入賞(レベルアップ成功時) ○90G チェリー入賞時(※取りこぼした場合は非突入) ○150G ボーナスが成立 RTの演出と期待度 RT中にレア小役(チェリー、スイカ、1枚役)とハズレが成立すると効果音+パネルフラッシュと共に ○会話の文字が赤くなる ○圭一の後ろの襖が開く →ヒロインが出現 微笑を浮かべるとチャンス 竜宮レナ<園崎魅音<北条沙都子<古手梨花の順にボーナスの期待度が高い。 ○液晶左「綿流し祭」ランプの色で期待度を示唆 白<青<黄<緑<赤<虹の順に期待度が高く、順序が矛盾するとチャンス ○RT残り5Gの演出で大石刑事から竜宮レナが取調べを受けていればチャンス ○RTラスト1Gに登場するヒロインがエンジェルモートの制服ならボーナス確定 RT中レバーONでBGMが「Friend」に変わり「綿流し祭」ランプが虹色になるとBIG確定。 ※変化タイミングの詳細は不明。BIG成立後毎ゲーム数%で抽選を行っていると思われる。 (残り10G以降は共通パターンに入るので変化はしない?) 150G完走RT 150G完走RTはO-BIG/N-BIG後のCZ-Aでしか発生しない。 各BIG終了後に突入するCZ-Aはこちらで前述してあるよう150Gの内部RTとなっている。 なので10枚役入賞で30G or 50Gに、チェリー入賞で90GのRTに短縮されてしまうと考えてもらうと解り易いだろうか。 そこで10枚役、チェリーより先にボーナスを成立させることで150G完走させてもらえる。 CZ-A中にボーナス成立しても告知をせず、そのままRT突入小役が入賞するまで継続する。 RT完走後、前回BIG消化から数えて150GまでRTが追加されると同時に BGMが「You」に変化+「綿流し祭」ランプが虹色になる。(BIG確定ではない。) ※注意点:RT中はボーナスを入賞させないように注意しながら打つ事が必要。 入賞させてしまうと残りのRTを完走しないままボーナスゲームになる為もったい無い。 ただし閉店間際であったり、急ぎの用があるならば入賞させる事をお勧めする。 それと当然だが「You」と「Friend」は同時に流れない。 150G完走RTのフローチャート (【】内はBIG消化後から数えたG数) ※一例です。 OYASHIRO-BIG消化 ↓ CZ-A突入 →【15G】1枚役+ボーナス成立 ↓ 【22G】10枚役A(50G完走RT) → 【72G】RT完走 ↓ 「You」+ランプ虹 ↓ 150-72=78Gの完走RT突入 ↓ 【150G】ボーナス確定
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/486.html
……暗闇の中で唐突に意識が覚醒した。 とっさに後頭部を触り、異変がないことを確認する。 血まみれでもないし、割れていることもない。 ……夢を見ていただけなのだから何もなくて当然だ。 今までに何度も見た、とても恐ろしい夢。 この夢を見ると、決まって震えが止まらなくなり、酷いときには朝まで寝ずに過ごしたこともあった。 ……呼吸の乱れを整えつつ、手探りで隣で眠っている人物……圭ちゃんの手を探り当てる。 その手を強く握り、祈るように圭ちゃんの腕を抱きしめる。 ……大丈夫だよね……? 私は圭ちゃんやみんなに、あんな酷いことはしないよね……? しばらくそうしていると、呼吸の乱れや動悸が収まってきた。 (……うん、もう大丈夫。もう怖くない) ……やっぱり圭ちゃんがそばに居ると落ち着く。 好きだからとか、そういうことじゃなくて……護られているような安心感がある。 私が辛かったり寂しかったりすると優しくしてくれるし、……何か間違ったことをしようとすれば、身体を張ってでも止めてくれる気がする。 いや、気がする、じゃなくて……実際にそうだった。 私が転校してからしばらくして、沙都子と大喧嘩した時のことだ。 ……私の投げた椅子から沙都子をかばってくれたんだ。 圭ちゃんが沙都子をかばってくれなかったら、きっと私は酷く後悔したと思う。 ……きっかけは些細なことだった。 圭ちゃんに悟史くんの事を……失踪した沙都子の兄だって教えたら、なんだか急に沙都子に優しく接するようになって……。 圭ちゃんは優しい人だから、悟史くんの代わりに、沙都子のお兄さんのように接してあげていただけなのに。 それなのに、私は沙都子に圭ちゃんを取られたような気がして、……沙都子が鬱陶しく思えてきて……。 …………そんな私の馬鹿な妬みのせいで、圭ちゃんは額に小さくはない怪我を負ってしまった。 普段は前髪に隠れているが、圭ちゃんの額には、その時の傷痕が残っている……。 静まりかえった教室で、額を押さえてうずくまる圭ちゃんを目の当たりにしたら、なんて馬鹿なことをしたんだって、急に怖くなって。 その場に座り込んで、泣きながらごめんなさいごめんなさいって、ずっと謝り続けてた……。 そして思い出せたんだ。 悟史くんに……沙都子を頼まれたことを。 ……その点に関しては例の悪夢に感謝するべきかもしれない。 夢の中の私も、沙都子の面倒をみなかったことを後悔していた。 ……そもそも、あの夢はいったいなんなのだろう……? 同じ内容の夢を何度も見るのは普通じゃないと思うし、……支離滅裂ではあるが、夢の中の私に全く共感できないわけではない。 もし同じ状況に立たされたのなら、私はどういう行動を取るのだろうか……? やっぱり私も、夢の中の私と同じように感情に身を任せ、この手でみんなを…………? 「……馬鹿馬鹿しい」 ……そんなことをしてなんになるんだ。 夢の中の私だって、自分の愚かな行動を悔いていたじゃないか。 それを知っているから、私は絶対にそんなことはしない。 …………。 ……もうやめよう。 せっかく気持ちを切り替えたつもりだったのに、またあの夢のことを考えるなんて……。 ……外の景色でも眺めて気分転換しようかな。 布団から出て、外を眺めるてみると…… 「あ……そっか。今日は……」 天には闇夜を照らすお月様。 しかも一月に一度しか拝めない、まん丸なお月様だ。 さっきまでの鬱屈とした気分が吹き飛ぶくらいの、とても綺麗な月。 うーん、こんなに立派なお月様を見ていると……。 (圭ちゃんに初めて会った日を思い出すな……) あの日は満月ではなかったけれど……今日と同じくらいに、とても綺麗な月夜だった。 よく覚えている。 一晩中、銀色のお月様を眺めていたから、よく覚えている……。 圭ちゃんの言葉が頭から離れなくて……胸の高鳴りが収まらなくて……ずっと月を見ていた。 「まさかねぇ……圭ちゃんが私を好きになるだなんて。そんなこと考えてもいなかったからなぁ……」 あの日、圭ちゃんと肌を重ねて。 思い出だけをもらって、圭ちゃんのことは忘れようと思った。 どうせ誰かを好きになったって、恋が叶うことはないんだから……。 だから、悟史くんのことも圭ちゃんのことも忘れて……もう二度と恋をしないと決めたのに。 それを圭ちゃんが、たった一言であっさりと吹き飛ばしてしまった。 ……あの頃の私は、自分の気持ちしか考えていなかった。 誰かが私を好きになるなんて考えていなかったし、それが誰かを好きになるのと同じくらいに幸せなことだなんて、全然知らなかった。 以前の私は、愛情は与えるだけの物だと思っていた。 ……でも、本当はそうじゃない。 愛情はお互いに与え合って育んでいく物だ。 私が与えた愛情を圭ちゃんから返して貰うと、私が与えた時よりも一回り大きくなって返ってくる。 それを何度も繰り返していたら……圭ちゃんへの気持ちは、抱えきれないほど大きくなっていた。 それはいつの間にか、悟史くんに対しての気持ちよりも……。 「……悟史くん、早く帰って来ないかなぁ……」 悟史くんには話したいことがたくさんある。 ちゃんとした自己紹介だってしたいし、一年間も沙都子を放っておいたことも謝りたい。 それに……確かめたい。 私の圭ちゃんへの想いが、偽物なんかじゃないって……確かめたい…………。 「……………………」 目を覚ましてからどれほど経つのだろうか。 十分か、二十分か。 それとも、まだ五分程度なのか。 いずれにせよ、このまま仰向けで天井を見つめていてもしょうがない。 一緒に眠っていたはずの人物の気配はまったく感じられない。 既に階下へ行ってしまったのだろう。 「……なんで起こしてくれないんだよ」 泊まりに来るときはいつも先に目を覚まし、俺を起こしてくれていたのに。 花柄の可愛らしいパジャマ姿で、圭ちゃん圭ちゃん起きてください、って……。 「ハァ……」 あのパジャマ、よく似合ってるから好きなのに。 あれを着た詩音に起こしてもらうのが、詩音が泊まりに来たときの、俺の密かな楽しみだったのに。 ……ま、愚痴っててもしょうがない。 ガバ、っと勢いよく跳ね起き、おぼつかない足取りで自室を後にする。 一階へ下りて詩音を探しに……って、その前に顔を洗わないとな。 洗面所へ向かって歩いていたら……いきなり背後から抱きつかれた。 「だぁ~れだ☆」 「…………は?」 そいつは俺の背中に、大きくて柔らかい何かを押しつけている……。 誰って……こんな事をするヤツはひとりしか居ないだろ。 ……おいおい、まさかこんな事をするからって、俺を起こしてくれなかったのかよ……? なんかちょっと悲しくなるが、問われているのだから答えねばなるまい。 「……詩音だろ? 分かったから放してくれよ……」 「ぶーーーッ!! はっずれーーー!!」 「ハズレでもなんでもいいからさ。早く放し……。…………ハズレ?」 ハズレって……詩音じゃない? 詩音じゃないとしたら、……誰なんだよ?! 慌てて拘束を振りほどき、相手の顔を…………。 「……魅音……?」 「おっはよ! ……なんか寝ぼけてるみたいだけど、大丈夫?」 「…………ちょっと待ってくれ。ってことは、俺の背中に胸を押しつけていたのは……」 「私だけど? いや、レナがね。圭一くんなんて、魅ぃちゃんが背中におっぱいを押しつければイチコロだよぅ、なんて言うからさぁ」 「レ、レ、レナぁああぁあああッッ!!!」 「はぅっ!?」 声のした方に視線を向けると、戸の隙間からレナがこちらを覗いていた。 またか……レナのヤツめぇ…… いつもいつも、魅音を使って俺で遊びやがってぇぇえええ……ッ!! こちらの様子に気づいたレナは、一目散に逃げ出した。 「レナ、待てこらっ!! 毎度毎度、魅音にいらんことを吹き込みやがって!! 今日という今日は許さんッ!!」 「はぅ~! 圭一くんが怖いよ~ぅ!! 怒らないでぇ~~!! 軽いジョークなのに~~!!」 泣きわめくレナを全速で追い回す。 家中を逃げ回った挙げ句、レナは台所へと逃げ込んだ。 レナを追いかけて、台所へ入ると……。 「ちょ、ちょっと、レナさん!? どうしたんですか……?」 「……は、はぅぅ……」 詩音がエプロン姿でフライパンを持っている。 ……どうやら朝食の準備をしていたようだ。 レナはというと、詩音の後ろに隠れてプルプルと震えている。 「……圭ちゃん。これはどういうことですか?」 「どうって……。いや、レナが……」 「この怯え方は普通じゃないです!! まさか圭ちゃん……レナさんに変なコトをしようとしたんじゃないでしょうね……?」 「はぁ!? ち、違う!! 俺はそんなことは……」 「はぅぅ、詩ぃちゃん、違うの~。圭一くんがレナを追いかけてきて、それとおっぱい……」 「ちょ、レナ?! 誤解を与えるような言い方をするな!!」 詩音の手からフライパンがこぼれ落ち、からぁん、と乾いた音を立てる。 「ま、待て、詩音……。落ち着け……」 詩音の顔から表情が消えていく……。 そして、音もなく、ゆっくりと俺に歩み寄ってきた。 ……あぁ、もう、なんでこうなるんだよ。 せっかくの日曜日だってのに、……今日は最悪の一日になるかもな……。 「……圭一くん、ごめんね。レナが悪かったよ。はぅ~……」 向かいの席に座ったレナは、本当に申し訳なさそうな表情でうな垂れている。 レナは本当に冗談半分だったのだろう。 俺を怒らせてしまったと思って、心から謝罪しようとしているのがよく解る。 それに引き替え、こいつらは……。 「圭ちゃん。もう許してあげなよ? レナだって素直に謝ってるじゃん」 「そうですよ。こんなに落ち込んだレナさんを見て、可哀想だとは思わないんですか?」 「…………お前らが言うな……」 実行犯のくせに全く反省していないな、二人とも。 「機嫌直してぇ……レナの卵焼きあげるからぁ~……」 レナはそう言い、うるうるした瞳で小皿を差し出している……。 なんか、揃いも揃って俺が怒っていると勘違いしているらしい。 「……別に怒ってるわけじゃないよ。誰かさんのせいで頭が痛いから黙ってるだけだ」 「あ、あぁ……そういうことですか……。あはは……」 詩音が引きつった表情で笑う。 ったく、少しは手加減しろってんだ。 床がコンクリートだったら死んでいたぞ。 「いやぁ、それにしても見事なパイルドライバーだったねぇ。きれ~~いに突き刺さっていたよ」 「……だろうな。半年くらい前に亡くなった親戚のおばあさんが、川の向こうで手招きしていたし。優しい人だったから、つい渡ろうとしてしまったよ」 「け、圭一くん……。それ、渡らなくて良かったよ。はぅぅ……」 「あは、はは……。そんな大袈裟なぁ……。………………。……あの、圭ちゃん?」 「なんだよ?」 「その…………ごめんなさい……」 詩音は俺に深々と頭を下げる……。 「だからもう怒ってないってば。誤解だって解ってもらえたし、それに……」 「……それに……?」 「……いや、なんでもない」 ……役得もあったしな。 …………今日は白か…………。 「……ちょっとさ、ト……顔洗ってくるよ。なんか頭がボンヤリするし」 「ホント? それなら冷たい水でスッキリした方がいいかもね」 「……あぁ、スッキリしてくる……」 「そういうわけだから。大金が掛かってるし、気合い入れてよね~?」 四人で仲良く朝食を取り終えると、魅音が俺の家に訪問した理由を説明してくれた。 なんでも例のゲーム大会の決勝戦が、実は今日だった、というのだ。 「まぁ、事情は分かったけどさ。それならそれで、もっと早く教えてくれれば良かったのに」 「いやぁ、ごめんごめん! うっかりしててさぁ。昨日の晩に思い出して、他のみんなには電話したんだよ。でも、圭ちゃんの家だけ繋がらなくて。何度も電話したんだけどねぇ~」 「……そういうことか」 ……なるほど、俺の家に繋がらないのは当然だ。 何故なら昨晩、俺と詩音は……。 「あ、もしかして……お楽しみ中だった……?」 「み、魅ぃちゃん!? そんなこと聞いちゃダメだよぅ!!」 「まぁな。なかなかうまかったよ」 「け、けけ、圭一くん?! うまかったって……そ、そんな言い方は詩ぃちゃんに失礼なんだよ!!?」 「へっ? そんなこと無いですよ。私が紹介したわけですし、おいしいって言われれば嬉しいです」 「し、詩ぃちゃんの紹介?! それじゃあ……詩ぃちゃん公認の浮気?! は、はぅぅ……」 「……おい、レナ。なんか勘違いしてないか? 俺と詩音はカレーを食べに行っただけだぞ」 「えっ!?」 「前に私と食べに行ったお店でしょ? 今度は圭ちゃんと一緒に来よう、って言ってたよね」 「そ、そうなんだ……。レナ、勘違いしちゃったよ……」 レナは、えへへー、と照れくさそうに頭を掻く。 とんでもない勘違いだぞ、ホントに。 まぁ何にせよ、だ。 臨時収入の可能性があるのは、素直に嬉しい。 それなりに高価な人形を二つも買ったせいで、圭一王国の財政状況は火の車なのだ。 「ところでさ、圭ちゃん。私だけ優勝しても自分のお金が返ってくるだけ、ってのは不公平だと思わない?」 「ん? いや、まぁ。それもそうだな」 「だからさ。私が優勝したら……」 「魅音が優勝したら……?」 「圭ちゃんには…………私とデートしてもらうッ!!」 「………………は……? ……な、ななな!??」 お、俺が魅音とデートぉ!? ちょ、ちょっと待て!! 「そんなのダメに決まってるだろ!? そうだろ詩音?!」 「別にいいんじゃないですか? 圭ちゃんが優勝すればいいわけですし」 「そういう問題じゃないだろっ!?」 「そうそう。圭ちゃんが優勝すれば、なぁーんにも問題ないよ。……それとも何? もしかして自信が無いわけぇ?」 「はぁ!? そんなわけねぇだろ!! 俺が本気になれば、ぶっちぎりで優勝だ!! お前らには影すら踏ませねぇ!!」 「よし、それじゃ決まりだね! いやぁ、想像しただけでわくわくするよ。おじさんにドギマギする圭ちゃんをからかうのは、さぞかし楽しいだろうねぇ」 「ほざきやがれ……! 優勝するのは俺だッ!!」 魅音とにらみ合い、バチバチと火花を散らす。 ……なんか勢いでとんでもない約束をしてしまったが、本当にいいのか……? まぁいずれにせよ、これ以上は小遣いの前借りも出来ないだろうし、何が何でも優勝するしかない。 さすがに交際費を女の子にだけ払わせるのは、男として問題があるしな。 …………俺もバイトしようかなぁ……。 「ところでお姉。沙都子と梨花ちゃまは診療所に寄ってから来るんですよね?」 「ん? そう聞いてるけど」 「それなら、私も診療所に行きます。お姉たちは先に行っててください」 「……どうした? 具合でも悪いのか?」 「いえ、そういうんじゃないです。最近、監督の沙都子を見る目がいやらしい気がするので、監視しておきたいんです」 「それはいつもの事だと思うけどな……」 「診療所に行くなら、そろそろ向かった方がいいよ。沙都子たちも家を出る頃だと思うし」 「あれ? 詩ぃちゃん、もう出ちゃうの? お茶を煎れようと思ってたんだけど……」 おぼんを持ったレナが、残念そうな顔をしている。 さっきフラっとどこかへ行ったと思ったら、台所へ行っていたのか。 「あ、いえ。せっかくですから、お茶をいただいてから出発します」 「ホント? 良かったぁ~」 レナは笑顔を取り戻し、湯飲みを配り、順々にお茶を注ぎ始めた。 ……しかし、当然のようにお茶を用意するレナってのもあれだな。 勝手知ったる人の家、って感じだ。 お袋と仲良いもんなぁ……。 「ん……? あれ? ちょっとちょっと! みんな、これ見てこれっ!!」 なんか魅音が湯飲みを指さしている。 みんなで覗いてみると……。 「お……茶柱か。珍しいな」 「へっへー! 幸先いいね!! こりゃあ、優勝はおじさんで決まりかな!!」 「ふん、そんなので優勝が決まってたまるかよ……って、ちょっと待て。俺のも茶柱が立ってるぞ」 「ふぇ!? ホント?」 「へぇ、二人も一緒にだなんて珍しい……あれ? 私のも立ってますよ」 「レナのも立ってるよ」 ……静寂が場を支配する。 おいおい、いくらなんでも全員が茶柱を立てるなんて出来すぎだろ……? 「これはただ事じゃないね……。なにかとんでもないお宝でも見つかるんじゃない? レナ御用達のゴミ山辺りから」 「なんだなんだ? 徳川埋蔵金でも見つかるのか?」 「徳川埋蔵金じゃなくても、大判小判がざっくざく、くらいはあるかもしれませんね~」 「はぅ……。かぁいい招き猫なら、この間見つけたけど……」 ……埋蔵金は冗談にしても、みんなに喜ばしい事が起こるのは間違いなさそうだな。 しかし、ここに居る全員にとって嬉しいことって、一体なんなんだ……? 「あら? 珍しいですわね。二人揃ってだなんて」 少女は、自らがお茶を注いだふたつの湯飲みを見比べながら、そう言った。 それに対し、彼女の同居人は沈黙を保っている。 「吉兆ですわ! 今日のゲーム大会は、私か梨花の優勝で決まりですわね!!」 「…………」 「圭一さんや魅音さん、レナさんも、みんなみーんな私のトラップで血祭りに上げて差し上げますわーッ!! ……梨花ぁ? どうしたんでございますの?」 長髪の少女は答えない。 ただただ、笑顔だけを浮かべている……。 「昨日から変ですわよ? ずーっとニヤニヤしてて。変なモノでも食べたのでございますの?」 「沙都子。この茶柱は、神様からのご褒美なのです」 「……ご褒美?」 「そうなのです。沙都子が強くなったから……ひとりで頑張ってきたから、神様がご褒美をくれたのです」 「よく分かりませんけど、ご褒美が茶柱だけだなんて、神様もしみったれてますわね」 「そんな事はないのですよ……」 長髪の少女は笑顔を絶やさない……。 彼女だけが知っている。 近い将来、親友が喜びのあまり泣き崩れることを。 近い将来、親友がこの家を出て行ってしまうことを…… 彼女だけが知っている……。 To Be Continued... Chapter-1 Hold me tight Chapter-2 アンダースタンド1
https://w.atwiki.jp/viphdb/pages/52.html
名前 コメント